[政府の主張する今回のSEND改革の背景]
前回の大きなSEND改革から10数年が経過しています。この間、従来のSENサポートでは対応できずEHCPの申請件数は劇的に増加、アセスメント・発行の遅れから連鎖的に子どもたちへの支援の遅れが生じているといわれています。
また、特別支援学校などのプロビジョンにおける需要と供給のバランスも崩れており、現在のEHCPを含めた特別支援制度における支援の責任は主に自治体(カウンシル)が担っていることから、地域による重大な支援格差が生じているとの懸念も高まっているとイングランド政府は示しています。さらに、これらの問題に起因するSEND裁判も増加しており、国・自治体としての財政的な負担も非常に大きくなっているとされています。これらの問題を解決するという目的のもと、今回のWhite PaperにおいてSEND改革案が発表されました。
[改革における主な目的・目標]
♦ EHCP取得を待たずとも特別支援教育が受けられるシステムへ
現在の制度ではEHCPの数が急増しており、取得までの長い待ち時間による支援の遅れや自治体への財政負担が問題になっています。そこで、これらの問題を解消するため、新制度ではEHCP取得という長い法的プロセスを待たずとも学校でのサポートが受けられるシステムの構築を目指しています。具体的には、Individual Support Plans(ISP:個別支援計画)やThree layers of support(3段階のサポート体制)の導入、mainstream schoolのサポート体制の充実、地域の教育・医療機関との連携強化などにより、特別支援ニーズのあるすべての人への迅速で質の高い介入を目指しています。また、長い法的プロセスを伴うEHCP取得の件数を減らし、自治体の負担を減らすねらいがあります。
♦ 地域による支援格差の是正
現在、EHCPなどのアセスメント・発行・裁判など一連のプロセスと法的な支援制度の責任は各自治体(カウンシル)が担っています。しかし、自治体の状況によって支援内容やEHCP取得までの待機時間、学校選択に大きな地域差があるのことが問題になっています。
そこで、全国共通の基準(National Inclusion Standards) を作り、住む地域によらず支援の質が保たれる仕組みづくりを提案しています。また、より複雑なニーズのある人々には、全国レベルの専門家パネルによって作成されるSpecialist Provision Packagesを提供し、地域格差をなくしていく方針です。
♦ インクルーシブ教育の推進
イングランド政府は、より多くの特別支援教育を必要とする人がmainstream schoolで学べるようにすることを目標としています。そのために、教員のSEND研修強化、言語聴覚士・教育心理士・作業療法士など専門家の学校への派遣やアクセスのしやすさの整備、学校施設の充実(具体的にはSEND向けスペース・Inclusion Basesの整備)などが提案されています。